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そんな私に微笑みかけながら、少年は白いカップに紅茶を注いで私の前に置いてくれる。
「わあ、おいしい……」
一口飲んでみたその紅茶は、今まで飲んだどの紅茶よりも美味しかった。いつも飲んでいる色の薄い紅茶とは、全然違う。まあ、比べるのが悪いんだけど。
「よかった」
何が楽しいのか、その少年はずっとにこにこしたままだ。
「ね、このタルト、僕がとってきたイチゴを使ってるんだ。食べてみて。きっと美味しいよ」
「ありがとう」
少年が取り分けてくれたお皿を受け取って、さくりとタルトにフォークを入れる。一口食べてみると、甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がった。
「ん、おいしい!」
「こっちのフールもどうぞ。あんずのコンポートはどう?」
甘いものなんて、一年に一度、食べられるかどうかだったから、目の前にあるお菓子に私は手と口が止まらなくなる。
は、と気づくと、次々にお菓子をたいらげていく私を、少年は楽しそうに見ていた。見れば、その少年が食べ物に手を付けた様子はない。
「あ……ごめんなさい」
急に恥ずかしくなって、持っていたサンドイッチを、そ、と自分のお皿に戻す。
「私、もしかして、あなたの分まで食べちゃったのかしら?」
「ううん、今は食欲がないだけ。遠慮しないで、どんどん食べて」
少年は、私のカップに紅茶のおかわりを注いでくれる。
「でも……」
「君の食べっぷりって、見ててすっごく気持ちいい。こっちまで楽しくなっちゃうよ。おかわりなら、いくらでもあるからね」
そうは言われても、さすがにこれだけ食べると、おなかはいっぱいだ。
おなかがいっぱいになるまで食べたなんて、どれくらいぶりだろう。最後の晩餐にするには、十分すぎるほど豪華な食事だったわ。
これ、ちびたちにも食べさせてあげたいなあ。あの子たちも甘いもの好きだから、きっと喜ぶ。
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