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その日、遂にユニコーンを見つけ出すことに成功した。
彼の毛並みは絹のように白く、その顔立ちは精悍で、座っている姿さえ腰を下ろした騎士のような気品があった。
私はユニコーンに呼びかけた。
「ユニコーンよ。私は遥か西の果てから来た!」
そう声をかけると、ユニコーンは座り込んだまま私を眺めた。
私もまたしっかりと彼の瞳を眺めた。この心に邪な思いはない。彼の力を借りて成し遂げたいのは妹を救うことだ。
妹は生まれつき持病を持っており、薬草を毎日飲ませなければ生きてゆけない身である。それを救いたいという思いすら邪なものと考えるなら、その角で我が胸を貫くがいい。
その思いを胸に秘めながら私は言った。
「貴殿の力を借りたい。その病を治す力を少しでいい…分けてくれ」
ユニコーンは体を私に向けると肩に傷があった。戦いで受けた傷だろうか。
「そういうことなら協力してもいいが…条件がある」
その言葉を聞いた私は聞き返した。
「条件か…それは何だ?」
「私の探し物を一緒に探して欲しい」
探し物か…と私は心の中で呟いた。
「どんなものだ?」
ユニコーンは恥ずかしそうに視線を下げた。
「実はな…先ほど落下した際に翼がばらけて飛んで行ってしまった。だから…落ちた翼を見つけて背中につけてくれ」
その言葉を聞いた私は気まずく思いながら、汚れた翼を地面から拾い上げた。
「すまない。実はさっき…尻を拭くのに使ってしまった」
ユニコーンは笑った。
「東洋にはな…けが人の治療に馬糞を使う国があるらしい。せっかくだ…お前も怪我をしてからその治療法を受けてみるか?」
私もまた笑顔で答えた。
「高貴な一角獣殿が、そのようなはしたないことをなさるとは思えん。ところでどうだろう。貴殿が妹を治療してくれれば2人で翼を探せるから効率も良くなると思うが?」
そう尋ねると一角獣も「ふむ…」と言いながら視線を上げた。
「悪くない考えだが、それには1つだけ問題がある」
「問題とはなんだ?」
「先ほど落ちた際に脚を折ってしまったから進めない。つまり貴殿の妹の所まで行くには翼を集めてもらうしかないのだ」
「そういうことなら、妹をここまで呼べばいい」
そう提案すると、ユニコーンは不思議そうに尋ねた。
「先ほど貴殿は、遥か西の果てから来たと言っていたような…?」
私は微笑を浮かべた。
「妹を家に置いてきては薬が切れてしまう。だから、こうして一緒に旅をしているのだ」
私が妹を指さすと、ユニコーンは求めていたモノを見つけたかのように笑みを浮かべ、折れているはずの脚を動かして立ち上がった。
「なるほど。つまり…私が空を飛んでいるときに矢を射かけてきたのは…お前の妹ということか!」
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