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「黒と白で」
ナズナは照れたのか、何だか頬を少し染めている。そこ照れるところだろうか? よくわからない男だ。そうかペンギンオタクなんだなこいつは。
「というわけでですね、水族館に行きましょう! 史郎くん」
「いや何が『というわけ』なん」
「駄目ですか?」
ナズナは断られるなんて思ってもいないような純真な目で、俺を見つめてくる。この目にはなんとなく弱い。実家に置いてきたチワワの太郎ちゃんを思い出すからだ。
俺はため息をつき、仕方なく頷いた。
「わかった。行くよ。でも年パスは……ちょっと今回買えない。お得とか言われてもさ、まとまった金額だから……」
「そうですか、じゃあ史郎くんの誕生日にプレゼントしましょうかねー。誕生日いつですか」
「いやいや……いらんけど」
「えー」
ナズナは嬉しそうに椅子から立ち上がった。
「でも急なお誘いに乗ってくれて嬉しいです」
丁寧に言われて、なんとなく変な気持ちになる。同い年なのだからこんな風に敬語を使わなくてもよいのに。
「──ナズナ。タメ口で喋ってくんない?」
「え? 嫌でした?」
「友達っぽくない、気がする」
「わかりました。んじゃ、史郎。水族館行こう。そしてペンギンを一緒に見よう」
タメ口になった途端、史郎くんから史郎に呼び捨てになったのは少しむずがゆかったが、とりあえず俺達はシェアハウスを出て一緒に水族館へ出かけたのだった。
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