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イワシの大群やでかいマグロ、ハンマーヘッドシャークなんかを先週も見たなあと思いながら眺めていたら、案の定ナズナはペンギンコーナーで捕まった。
仕方なく俺も一緒になってペンギンを眺める。
「あのペンギン……種類わかんないけど。なかなか凛々しいな。眉毛っぽくて」
「イワトビペンギンだよ。かっこいいよね! イワトビペンギンはね……マカロニペンギン属の……」
にこにことペンギンを見つめるナズナは、俺の言葉にぱっと目を輝かせてイワトビペンギンの生態について説明を始めてしまった。本当にペンギンが好きなんだなあこの男。あまりにも詳しくてちょっとぼーっとしてしまったら、ナズナがそれに気づいたのか言葉を止めた。
「あーごめん、調子に乗ったかもしれない。少しずつ史郎にペンギン知識を教えていくから、安心してね」
いや別にペンギン知識欲していない。そう思ったが、なんだか楽しそうなナズナを見ていたら、どうでも良くなった。
ペンギンオタクという謎属性だけど、意外と良好な友人関係を築けているではないたろうか。ナズナは俺に対して率直な自分の言葉をぶつけてくれる。それが心地よいのかもしれなかった。
「もしかしてさあ、ナズナ。俺をペンギンと同一視してないか?」
「まさか。いくら僕だって人間とペンギンの区別くらいつくよ。でもペンギンていいだろう?」
ナズナはそう言って、軽く笑った。
俺達の輝かしいペンギンライフの始まりだ。……ってなんだそりゃ。まずいペンギンに毒されてきたかもしれん。
「ね、史郎。お魚いっぱい食べるんだよー」
そう呟いた視線の先には、イワトビペンギンがいた。ナズナなりの冗談なのかも知れない。俺は苦笑して、「今夜は魚食うかぁ」と返しておいた。
終
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