ペンギン水族館~俺とナズナのペンギンライフ~

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 戸惑う俺を知ってか知らずか、ナズナは電卓でどれだけお得なのかをはじき出す。 「ほらね、普通に入場券を買って一年の間に三回行くのと、年パスを購入して好きなだけ行くのは同じ値段なんです。買わないなんてもったいないじゃないですか」 「水族館の営業の人かなんか?」  確かに単純計算したらそうなるのかもしれないが、そもそも年に三回も水族館に行くようなことは、これまでの人生なかった。 「ペンギンに会いたくないんですか?」  どこまでペンギンに会いたいんだろうかこの男は。水族館に行くのであれば、彼女でも作って一緒に行ったらいいのではないだろうか。 「彼女ですかあ……」  ナズナは難しい顔をして斜め上を見つめ、しばらく何か考えていた。しかしそのまま黙り込んでしまったので、彼女の当てがないのだろうな、と俺は察した。 「いや、史郎くんと水族館に行くのが楽しいんです、僕は」 「え、なんで。俺は別に水族館は……」 「黒田史郎くん。……君の名前って、ペンギンみたいですよね」 「──は?」  突然フルネームで呼ばれたので、何かと思ったら妙な指摘をされた。ペンギンみたいって? どこが?
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