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現在ルームシェアをしているナズナと俺は、元々お互いを知っていたわけではない。ルームシェアがきっかけの、知り合って日の浅い友人だ。友人、と言っても差し支えはないのだろう。
「史郎くん、水族館に行きましょう!」
「水族館? ……先週の日曜も行った気がする」
「うん、ちょうど一週間前、確かに行きましたね」
ナズナは俺と同い年の大学生だが、誰にでも敬語を話すようだ。丁寧な人物という印象だが、少し変わっている。
先週俺達は男二人で水族館へ出かけた。そしてペンギンのところで長々とその生態を眺めていて、俺が次の水槽に行こうと言ってもなかなか離れがたくそこにいるので、しまいに俺はナズナを置いて一人で館内を廻ったのだ。
「またペンギンを見に行きたいのか?」
「え、史郎くん。僕がペンギン好きだって、よくわかりましたね」
「それは……わかるだろう」
「そもそもペンギンを好きじゃない人間がこの世にいるのでしょうか? 史郎くんはペンギンを嫌いですか」
「別に嫌いではないけど」
「じゃあ好きですね!」
ナズナはにっこりと満面の笑みを浮かべ、テーブルに水族館の年間パスと電卓を置いた。
水族館の年間パスなんてものがあるなんて、ナズナと水族館に行くまで知らなかったし、必要もなかったのだが、つい先週も「年パス買わないんですか?」と聞かれた。
「史郎くんも年パス買った方がお得ですよ? いつでも水族館に行けますし」
「いやー……」
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