ドラム

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「なあ、青春って何だろうな?」 「音楽の事じゃね?」 「…空の悪口でも言ってろよ」 山先と卯鍋は音楽好きだった。 青春の全てを音楽に駆けていたのだ。 バンドの録音の為に職場の倉庫を借りたり、店舗の入り口にライブのポスターを貼ってもらったりしていた。 大抵が近所のスナックを借りて歌を披露していた。 深夜、スナックの裏口から機材を搬出していると、ドラムが「じゃあああん」と鳴る事があった。帰宅してドラムをチェックすると、人の顔の跡が付いている。 「こう苦し気な、痛みを我慢している様な…顔の形が、油や黒ずんだ液体でくっきりと」 ある日出勤すると、隣のビルで騒ぎが起こっていた。 屋上で手首を切って死んでいる女が発見されたのだ。 血痕が少ない事から豪雨の日に死んだのだろうと云う事だった。 「気付いて欲しくてドラムに飛び降りていたのだと思います」
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