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「もしもし、どうしたの」
「着いたこと報せたくてさ、ここって入り口はひとつだけだよね」
「そうよ、よく知ってるわね」
「まあね」
何度も来てるからと言いそうになってしまったが、思いとどまった。
「すぐにそこに行くよ」
「じゃあ、あたしも」
オレは通話を切ると、フェンス沿いに歩いて入り口に向かった。真知子はまだ動かない、どうやら同時に到着できる距離まで待っているようだった。
モニュメントと入り口とほぼ同じくらいのところにオレが来ると、真知子はあるき出した。うつむいてはにかんだ感じの顔を見ながら、オレも目尻を下げはじめる。早く会いたくなって、早歩きをして先に着き入り口前で待つ。──戻らない、変わらない、よし、やはりここがポイントらしい。
中に入らず真知子が来るのを待つ、空色のワンピースをひるがえしながら白のサンダルに素足の彼女が、小走りになり近づいてくる、あとちょっとだ。
「あっ」
サンダルが脱げかかったのか、真知子がつまづく。思わず助けようとして、入り口の柵を超えてしまった。そしてオレはまた駅前に戻っていた。
「またかよ」
突然、叫んだオレに周りの人たちがびっくりしていたが、そんなコトはもうどうでもいい。オレはまたまたまたまたまた走り出した。
いっそのこと歩いていって遅刻してやろうかとも考えたが、真知子のあの可愛らしい姿を見たあとではそんな気になれなかった。
公園にたどり着く、真知子を確認する、さて、今度はどうする。今度は転んでも助けない事にするか、いや、さすがにそれはできない。ならば転ばせないようにする。
電話をかけて、もうすぐ着くから入り口付近で待っててくれと告げる。うん、待ってるという言葉を聞いたあとフェンス越しに歩いていく真知子を見守る。頼むから転ばないでくれよと願いながら。
無事に到着したのを確認してから急いで入り口へと向かった。
「おまたせ」
到着したオレに真知子ははにかみながら手を振る。オレも真似して手を振ると、真知子はそのままかるくハイタッチを待つような仕草をしたので、何気なしに、本当に流れでついハイタッチをした。
そしてまた駅前に戻っていた……。
「またかよ、なんでだよ」
さっきより怒りを込めて叫んでしまった。
なんでだ、さっきは中に入ってないぞ、真知子はまだ公園の中にいたけど、オレは入ってないぞ。
心当りは──あれか、ハイタッチしたときに手が入ったことか。
「ちょっとぐらい大目に見ろやぁぁぁ」
もう完全に頭にきたオレは全力で走り出すと、今度は公園につくやいなや高さ5メートルあるフェンスをよじ登って入ろうとした。
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