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つーくんはどこに行ってしまったのか。私はベランダに出て手すりから身を乗り出した。
いたっ!
ふりふりといつも繋いでいた手で私を呼んでいた。手を伸ばすと、重力が上半身に移った。
「つーくん!」
真っ白な視界に、いたはずのつーくんはいなかった。乾いた目で周囲を見渡す。
見つけた、が。
「汚い手でつーくんに触れるな!」
そこには知らないガキがつーくんを抱いていた。あいつがとった。私は奪い返そう追いかけるも逃げられる。
追いつき腕を強く握りしめた。
「子供だからって何しても許されると思うなっ!」
首も掴み、絞める。ガキは醜く歪む表情になりながらもつーくんを決して離さない。
取り返せると思った。しかし、ガキとつーくんはいなくなった。弾けるように私の手から消えたのだ。どこを見てもただ、真っ白な空間が続くだけ。
どのくらいが経ったのだろう。時間を忘れ、へたり込んでいた。私は一人になった。35年もの間一緒にいたつーくんが私からなくなれば、もう何も残らない。
右も左も、前も後ろもわからないここをどう進めばいいのかわからなかった。
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