愛着

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 洗濯バサミは茶色い毛の束を挟みながら、悠々と風にあおられていた。  私はベランダの不揃いに脱ぎ捨てられたスリッパを履かず、素足のまま出た。ベランダ内を見回してから手すりに身を預け、下を見た。目は良くはないが、7階からでも絶対に見逃さない自信はある。なんたって35年もの間、ずっと一緒にいたのだから。  いない。  力任せに地面を踏み、跳ねるようにして玄関に向かった。乱暴に開け放ち勢い余りながらも階段を駆け降りる。  どこにもいない。  探し回っているとプーっとクラクションが絶え間なく聞こえ、そこで初めて道路に出ていたことに気づいた。 「どけっ! 死にてぇのか!」 「見つからないなら死んでやるからな!」  しばらく言い合いをしているとそこに警察が現れた。署に連れて行かれた私は泣きながら訴えた。
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