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「うちの、うちの子が……いなくなったんですっ!」
「まずは落ち着いてください」
「行方不明なんですよ!? 落ち着いてなんかいられません!」
「わかりました。すぐにでも捜索しますので、お子様のお名前を教えていただけますか?」
「つーくんです」
「つーくん、ですか。ちなみに本名は、」
「だからつーくんですよ!」
「わ、わかりました。それではお母様が最後に見たつーくんの服装を教えていただけますか?」
「服は着ていません」
「……ん、と、いいますと?」
「洗濯した後なんですよ? 服なんて着ているわけないじゃないですか」
「……えーっと」
ぽりぽりと頭をかく警察官。イラッとした。そんな暇があったら早く捜索してほしいのに。
「洗濯したのですか?」
「はい」
「お子さんを?」
「はい」
「洗濯ですよ?」
「だからそう言ってるじゃないですか!」
バンっと机を叩いた。もう我慢の限界だった。こうしている間にもつーくんはどんな目にあっているのか。考えただけでも胸が張り裂けそうだった。
「うちの子に何かあったら責任取れるんですか!?」
「失礼を承知でお聞きしますが、人間のお子様ですよね?」
「つーくんが人間なわけないじゃないですか!」
何を当たり前のことを言っているのか。
「くまのぬいぐるみですよ」
「あんた警察を馬鹿にしているのかっ!」
その後、パトカーで自宅に帰された。
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