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四十九日の裏ばなし
雑居ビルが立ち並ぶ下町。
うらぶれた裏道に一軒の飲み屋があった。
店の名は『居酒屋 裏ばなし』
さびれた建物の狭間にあって、ともすると見過ごしてしまいそうになるくらい存在感のない店だった。
というのも、昼間は人けがなかった。シャッターは閉じられ、まるで開かずの間のようにひっそりとしている。したがって、街のほとんどの人間は、店はずいぶん前から廃業しているのだと思い込んでいた。
店が開くのは人通りの少なくなった夜の八時を回ってから。板前である店主が、中から出てきて店を開ける。
そんな具合だから、客は、ほぼご常連だけだといってよい。他人には聞かれたくない。大っぴらに話はしたくない。けれど、誰かに親身になってほしい。そんな人間がこの店を訪れるのだ。
今宵も、どこからともなく喪服に身を包んだ男が現れ、いそいそと玄関ののれんをくぐった。
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