鉄拳不要

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鉄拳不要

「皆の者、もう大丈夫だ」 後ろを振り向くと、殿様が一匹の黒い子犬を 抱き上げていた。 「あのう、もしかしてその子犬が天狼神様ですか?」 オレが尋ねると 殿様がうなずく。 惣吉さん達はその場で跪き、 巌雄と祈念さんはなんだか身もだえしている。 (かわいいとかもふりたいとかいう言葉が聞こえたような) と、その時。 オレと巌雄、祈念さんが突然地面にしゃがみこむ。 「みんな、技を使った為の代償の貧血だわ。 白い笹にくるまれた超誇丸を食べないとぉ」 祈念さんがそう言うが、俺達は動くことができない。 「しっかりしろ。この白い笹の中の薬を食すのだな。 今、取り出してやる」 そう言って超誇丸をオレの口に入れてくれたのは惣吉さんだった。 他のみんなも、お侍さんに超誇丸を食べさせてもらって 事なきを得た。 「ふぅ、技を使った後のこの症状だけはいただけないぜ」 巌雄が心底嫌そうにそう言った。 「皆の者、落ち着いたか」 そう言ったのは殿様だった。 あれ、だけどなんか殿様と雰囲気が違う。 すると殿さまがオレを見て 「そうだ、我はこの者を依り代に そなた達に話しかけておる。 荒魂となった我を救ってくれたこと感謝する」 その言葉に不思議とオレ達は頭が下がった。 惣吉さん達お侍さんなんかは先程と同じく跪いている。
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