鉄拳不要

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そう言うと、殿様の腕の中の天狼神様は 黒い子狼から光の玉へと姿を変えた。 殿様はそれが当然のように無言で洞を出るので、 オレ達も後に続いた。 殿様は洞の右隣のお社の前に立った。 すると、光の玉となった天狼神様は すぅ〜と吸い込まれるようにお社の中に 入って行ったのだった。 そして殿様がお社に手を合わせるので オレ達も慌ててそれに倣った。 しばらくして殿様が、 「そなた達ご苦労であったな。 確かにそなた達は遥か未来から我らを助けに 天狼神様に呼ばれた者達だった。 我の頭の中には血闘道についての知識が 入っておる。 これから流派を興し、この地を穏やかに しかし侮られぬよう守っていく事を誓う」 オレはその言葉を聞きながら、 この人が血闘道の開祖となる人なのだな と思った。 そしてふさわしい人だと思った。 巌雄も祈念さんも、うんうん頷いている。 「さて、せめてそなた達の功績に対し ささやかながらの宴でもと思ったのだが 未来へ帰る時間がやってきたようだ。 何もしてやれぬこと、済まぬ」 「いやぁ、お礼なんていりません。 それよりも、良き領主として血闘道を使って この地を平和に納めて下されば それで満足ですよ」 巌雄が漢らしくそう言った。
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