振り返ってみれば

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オレはその時思わず「先端恐怖症なんですぅ」と叫んでしまった。 いや、さすがに高校一年生になって注射が嫌いですというのは 同席していた祈念みこの手前言えなかったのだ。 草食男子でもやしっ子でも、その位の意地はあるのだ。 すると師匠がにこにこ笑って、 「わはは、大丈夫じゃ。わしら血闘道、血を出すのはここじゃ」 そう言って師匠は顔の真中を指さした。 そう、人間の顔の真中にあるものなーんだ。 答え:鼻 「あの、もしかして『鼻血』ですか」 すると師匠は重々しくうなずいた。 「我が血闘道は二月十四日のバレンタインで 思いを成就されなかったり義理チョコやら 売れ残ったチョコの中から業を背負ったチョコレートが 二月十五日に超誇丸(ちょうこがん)という丸薬になる」 そう師匠は言ったのだった。 なんかばっちいなと思ったがその時は 巌雄に追われていて藁にもすがる思いだったので オレは師匠に頭を下げて血闘道に入門したのだった。 「おい、優人。何をぼーっとしているんだ」 突然隣の巌雄から声をかけられ オレはハッと我に返った。 「いや、実は入門した時の事を考えていて。 あの時、師匠はド素人の血闘道について何の知識も無い オレによく超誇丸を食べさせたなと思って」 すると師匠はまたもやワハハと笑った。
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