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04.竜葬
急ぎ足で戻るテルの心臓の鼓動は早く、汗は雪解け水のように流れてくる。
青い月夜は全ての感覚を研ぎ澄まさせる。
心臓が急かせる。
足を前へ前へと運ばせる。
ざわめく森の生き物の呼吸。
目的の野営地は赤く揺らめいていた。
エルクの祝宴の炎に違いない。
鼻を衝く不快な匂い。
酔った大人達がゲテモノを焼いているんだ。
盛大な炎に対して聞こえない歓談の声。
みんな、もう寝ちまったんだよな。
遂に視界に捉えた残酷な景色――。
もう、何も否定できず、テルは力なく膝から崩れ落ちた。
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