04.竜葬

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「あの、これ……」 不意に声をかけられ、テルは驚きのあまり飛び跳ねた。 それでも部族一の弓の使い手は、反射的に着地と同時に弓を絞った。 「え!」 「え?」 互いに声を発した。 弓と同様に気を張りつめたテルも。 矢を向けられたヴェルンドも。 「どうして君が?」 「これ、忘れ物。お清めはしておきました」 「君はこれを背負って、一人でここまで来たのか!」 ヴェルンドは20キログラムあるエルクの角を背負っていた。 そして、テルの到着から(わず)かに数時間の差で初めての場所に辿り着いたのだ。 「って、悠長に話してる状況ではないようですね」 「……ありがとう」 テルはエルクの角を短剣で切り出し、加工していく。 「今からドラゴンを呼ぶ。俺の側から離れないで」 テルが竜笛を吹くと、ヴェルンドは顔を歪め耳を塞いだ。 人には聞き取れないはずの竜笛。 加工に失敗した訳ではない。 その証拠に、早くもドラゴンが寄って来た。 「見ない方が良い。俺達の葬式は独特なんだ」 「竜葬ね。話に聞いたことがある。魂をドラゴンが運んでくれるんでしょ」 「あ、危ないよ、こっちへ」 「いや、触らないで!」 テルが差し伸べた手をヴェルンドは咄嗟に躱したのだった。
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