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05.赤い月
竜葬を見届けた二人は、足の向くままに移動を開始した。
ローラシア兵に一矢報いたい気持ちはあったが、無駄死にするのは目に見えていた。
願わくば、この足の先に敵が居ないように、テルは女神に祈った。
成り行きで着いてきてしまったヴェルンドは、ばつが悪かった。
親切心で差し出された手を無下に断る処か、拒絶してしまったのだから。
しかし、テルの頭にあったのは、そんなことではなかった。
今も、かなりのペースで起伏に富んだ獣道を歩いている。
確かにエルクの角を背負わない分、彼女の方が身軽ではある。
それにしても、呼吸の乱れもない。
「君はどこに行くんだ?」
「あなたと同じで、分からないわ。アイラ・カグヤ様のお導きのままに」
「そうだな。お導きのままに」
視界がひらけて、二人はようやく腰を下ろした。
「食うか? 固いけど」
テルは保存していた干し肉を勧めた。
「ありがとう」
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