05.赤い月

1/3

68人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

05.赤い月

竜葬を見届けた二人は、足の向くままに移動を開始した。 ローラシア兵に一矢報いたい気持ちはあったが、無駄死にするのは目に見えていた。 願わくば、この足の先に敵が居ないように、テルは女神に祈った。 成り行きで着いてきてしまったヴェルンドは、ばつが悪かった。 親切心で差し出された手を無下に断る処か、拒絶してしまったのだから。 しかし、テルの頭にあったのは、そんなことではなかった。 今も、かなりのペースで起伏に富んだ獣道を歩いている。 確かにエルクの角を背負わない分、彼女の方が身軽ではある。 それにしても、呼吸の乱れもない。 「君はどこに行くんだ?」 「あなたと同じで、分からないわ。アイラ・カグヤ様のお導きのままに」 「そうだな。お導きのままに」 視界がひらけて、二人はようやく腰を下ろした。 「食うか? 固いけど」 テルは保存していた干し肉を勧めた。 「ありがとう」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加