02.テル

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ノヴォパンゲアは群雄割拠の戦国時代であった。 広大な海に広大な大陸。 つまり、国境は全て地続きなのだ。 有限なる領土を護り、広げるためには、他国を征服するしかない。 無限に広がる星空の世界など、理解の外である。 とはいえ、その日暮らしの領民達のほとんどは、まだ知らない。 大陸にどれだけの国があり、どれだけの人間がいるのかを。 辺境の地アメイジアの少年テルもその一人であった。 アメイジアは月の女神を信仰する狩猟牧畜民の遊牧地だ。 野生の巨大鹿(エルク)を狩猟し、家畜の巨大鹿(エルク)を飼育している。 月の女神は狩猟と夜と死を司る。 テルは隣接するローラシアとの戦争で幼い頃に両親と弟を失ったが、部族は全体で一つの家族だった。 生活に不自由さはなく、今では部族で一番の弓使いに成長した。 今日も4メートル級のエルクを仕留め、一人、谷奥の泉で祈りを捧げようとしていた。
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