02.テル

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遊牧民族はそのテリトリー内に幾つもの聖域を有している。 ここケイロンの泉もその一つだった。 テルは斬り落としたエルクの角を背負い、松明も持たずに無言で歩いてきた。 道を照らす灯りは満月だけで充分なのだ。 これ以上の加護の光はない。 月明りは、エルクの角の影を伸ばしていく。 成獣の角の長さは2メートル・重さは20キログラムに達する。 角は部族の子供の玩具や武器だけでなく、女性の装飾品や薬として活用ができる。 干し肉と角は他民族との交易にも使える。 そのため、彼は聖なる泉で狩りの成功と角のお清めをしに来たのだ。 夜間は危険な主竜類に襲われない。 それでも、夜行性の危険な生物は存在するので、テルは弓矢を携行している。
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