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遊牧民族はそのテリトリー内に幾つもの聖域を有している。
ここケイロンの泉もその一つだった。
テルは斬り落としたエルクの角を背負い、松明も持たずに無言で歩いてきた。
道を照らす灯りは満月だけで充分なのだ。
これ以上の加護の光はない。
月明りは、エルクの角の影を伸ばしていく。
成獣の角の長さは2メートル・重さは20キログラムに達する。
角は部族の子供の玩具や武器だけでなく、女性の装飾品や薬として活用ができる。
干し肉と角は他民族との交易にも使える。
そのため、彼は聖なる泉で狩りの成功と角のお清めをしに来たのだ。
夜間は危険な主竜類に襲われない。
それでも、夜行性の危険な生物は存在するので、テルは弓矢を携行している。
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