03.ヴェルンド

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「俺はそのことを知らせに戻る。君も遠くへ逃げるんだ」 「あなたの村は近いの?」 「俺達は定住していない。今夜はこの道を真っすぐ降りた処に泊まる。 だが、君の足では半日はかかる。 日が昇るとドラゴンも活発に動き出す。山に身を隠しながら逃げるんだ」 テルは慌てて駆け出したが、 ヴェルンドは暫し泉に浮き、漂いながら月光を浴びるために留まった。 彼女は聖域の清流で敵の呪詛を祓い、月明かりで魔力を蓄えようと試みた。 だが、彼女が詠唱しても、何の効果も発動できなかった。 ――厄介な敵、このまま二度と魔法が使えなくなったらどうしよう――。 彼女はそう想うと唇を噛み、悔しさを滲ませた。 ふと目にした岩の上には、テルが忘れていったエルクの角があった。 彼女は角の清め方を知っていた。 角は魂を失って半日経ち、既に無機質なものになっていた。 これなら安心して触れられる。 ヴェルンドはテルの代わりに角を丹念に清めた。
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