5人が本棚に入れています
本棚に追加
<ステージ1 チュートリアル>
ひょうひょうと乾いた音を立てて風の吹く、砂漠の中のゴーストタウン。青い空に、日干しレンガの褐色が映える。
パジャマ姿の代わりにデザートパターンの迷彩服を纏い、モーニングコーヒーの代わりにM4カービン銃を持った人間が、『ねえ、今日は何して過ごす?』の代わりに言った。
「私はエイヴェリー。お前のスペックを言え」
「……スペック」
「HPと初期弾薬数を計算する。スペックを言え」
「スペック?」
「言える限りお前のデータを言え」
「結婚シミュレーションゲーム? これ」
「間違ってない。やればわかる」
浅はかなおれは考えた。これは……何かのミッションをクリアすると、ウフフな展開が待っているタイプのゲームだろうか。
「ええと。後藤真吾。38歳。身長172㎝。体重64㎏。血液型A。珠算2級。普通免許。大卒。年収手取り……」
「もういい。右上を見ろ」
HP746 弾薬数 90
エイヴェリーは言った。「まあ、こんなもんだろう」それから左上を指した。「こっちは私だ」
HP1258 弾薬数 30
「NPCのくせに……そっちの方がHPいいな」
エイヴェリーはプログラムらしく、淡々とゲームの説明を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!