5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ミッションクリア条件は二つ。3つのステージをクリア。このゲームの名前を言う。……キーコードだ」
「名前? ……結婚シミュレーションゲーム、じゃないの?」
「そうだが、ちがう。ステージ3で、また説明する」
フェイスマスクの上の青い目が一度まばたきする。
「ステージ1を開始する。建物の陰から、150ヤード先の廃ビルにいる敵兵の殲滅。以上。質問」
「あー、えーと」
「ない、でいいか」
今にもM4を撃ち始めそうなエイヴェリーを、おれは慌てて遮った。
「ちょ、これはおれとあんたの協力プレイ? 対戦プレイ?」
「両方だ。ふたりで敵を殲滅するが、より多くの敵を倒した方にポイントが入る。HPが上がり、弾薬数が増える」
「どっちかのHPがゼロになったら、ゲームオーバー?」
青い目が、笑ったように細くなった。「ならない」
「ならない?」
「ゼロにならないように、できている。やってみればわかる」
「どういうこと?」
エイヴェリーは機械的に繰り返した。「やってみれば、わかる」
おれはヘルメットごしに頭を掻いた。
「ま、いいや。結婚シミュレーションなんてふざけたやつよりは、こういう系の方がいい」
エイヴェリーが冷ややかに言った。
「それは何より。武器を選べ。AK47かM4か」
「じゃあ、AK47で」
「男はAK47を選びたがる」エイヴェリーが後ろに置いていたバッグからAK47をおれに差し出した。
「あんたは男?女?」
「ニュートラル。使い方はわかるか」
「たぶん。YouTubeで見たことある」
おれはずしりと重たく、冷たい銃身を両手に持った。そのリアルな感触に、ふと気づく。コントローラは、どこへ行った。
おれの考えを遮るように、エイヴェリーが無機質な声で告げた。
「では始め、だ」
目の前の空中に、オレンジ色の文字がタイプされて浮かびあがった。
Ready Go!
最初のコメントを投稿しよう!