棘とシャベル

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「ミッションクリア条件は二つ。3つのステージをクリア。このゲームの名前を言う。……キーコードだ」 「名前? ……結婚シミュレーションゲーム、じゃないの?」 「そうだが、ちがう。ステージ3で、また説明する」  フェイスマスクの上の青い目が一度まばたきする。 「ステージ1を開始する。建物の陰から、150ヤード先の廃ビルにいる敵兵の殲滅。以上。質問」 「あー、えーと」 「ない、でいいか」  今にもM4を撃ち始めそうなエイヴェリーを、おれは慌てて遮った。 「ちょ、これはおれとあんたの協力プレイ? 対戦プレイ?」 「両方だ。ふたりで敵を殲滅するが、より多くの敵を倒した方にポイントが入る。HPが上がり、弾薬数が増える」 「どっちかのHPがゼロになったら、ゲームオーバー?」  青い目が、笑ったように細くなった。「ならない」 「ならない?」 「ゼロにならないように、できている。やってみればわかる」 「どういうこと?」  エイヴェリーは機械的に繰り返した。「やってみれば、わかる」  おれはヘルメットごしに頭を掻いた。 「ま、いいや。結婚シミュレーションなんてふざけたやつよりは、こういう系の方がいい」  エイヴェリーが冷ややかに言った。 「それは何より。武器を選べ。AK47かM4か」 「じゃあ、AK47で」 「男はAK47を選びたがる」エイヴェリーが後ろに置いていたバッグからAK47をおれに差し出した。 「あんたは男?女?」 「ニュートラル。使い方はわかるか」 「たぶん。YouTubeで見たことある」  おれはずしりと重たく、冷たい銃身を両手に持った。そのリアルな感触に、ふと気づく。コントローラは、どこへ行った。  おれの考えを遮るように、エイヴェリーが無機質な声で告げた。 「では始め、だ」  目の前の空中に、オレンジ色の文字がタイプされて浮かびあがった。  Ready Go!
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