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四月八日のヴィーナス
四月八日の深夜、僕は彼女に接吻した。
二人の口は互いに血生臭くて、とてもではないが接吻する雰囲気ではなかった。だが、僕達は舌を躊躇なく絡ませた。
赤い潤滑剤は、いつもより動きを滑らかにする。離れそうになる舌を繋ぎとめようと、必死に彼女の頭を鷲掴みにする。互いの体温を確かめるように、鼻を擦らせた。
長い時が経ち、ようやく唇を離した。僕は汚れた彼女の唇を拭ってやりたくて、朱殷に染まった右手を伸ばす。
だけど、これでは余計汚れてしまう。仕方なく手を引っ込めた。代わりに彼女の腕の付け根を優しく撫でると、彼女は上目遣いでそっと微笑んだ。
いつもは白い彼女の歯は、真っ赤。
僕は目を細めた。
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