淡い君には赤いハイヒールがよく似合う

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 高校時代の友人、麻里奈が結婚した。私はどこか、その吉報を持て余すような心持ちでいた。 「今度結婚することにしたの。七恵には伝えておきたくて」  電話口の彼女はいつもより幾分か声が弾んでいた。これからの生活に心躍らせているということが、直接顔を突き合わせていなくとも分かった。 「おめでとう」  空返事にならないように気をつけながら、友人の気安さで私は麻里奈を祝い、結婚式には必ず出席することを伝えた。  華子にはもうこのことは伝わっているのだろうか。高校時代の数少ない友人の二人目。私達はいつも一緒に行動していた。少しだらしなくて、異性に対して奔放な麻里奈と、潔癖で、折目正しい性格をした華子。それに、これといった個性のない私。調和を取るように存在している私自身の存在意義を考えないことはなかったけれど、三人で過ごす時間は楽しかったことを思い出す。  麻里奈が結婚する。制服を着て三人で過ごした時間が、もう十年も前のことだと思うと、時の流れの早さを実感せずにはいられなかった。 「麻里奈、結婚するんだって」  華子にそう話しを切り出した瞬間の彼女の表情を思い出す。驚きと同時に、それとは別の感情が見え隠れしていた、あの顔。同級生の結婚という話題に私達は少なからず刺激を受けていたはずだった。その気持ちを共有したい衝動に駆られたが、私達はそのようなことはしなかった。お互い同じ空間にいながら、自分の感情を処理することで精一杯だったのだ。何かを伝えたいような気がしたけれど、それは言葉にならずに私達は形だけの近況報告をし、早々と別れた。  私はこの後、婚約者と会う約束をしていた。優しくて、頼りがいもある、文句の付け所がないような人。いつまで経っても男の人と接点を持たない私に対して、実家の母が紹介してくれた相手だった。  私達は母から紹介された後に、何度かのデートを繰り返し、そして、付き合った。彼にとっても私にとっても、お互いが初めての相手だった。私も彼のことが嫌いではなく、むしろ、好ましく思っていた。ただ、その気持ちが恋愛感情であるかは自分でも分別がつかなかった。何となくその場の雰囲気で告白を受け入れ、三年の交際期間を経てプロポーズを受け入れた。私はただ、ただ流されるままに彼との距離感を図ってきた。  三人の中で一番最初に結婚をするのは自分だと心のどこかで思っていた。だから、麻里奈が結婚すると聞いたとき、私は少なからず衝撃を受けた。
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