美しい花には棘がある

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 周囲には私しか居ないのを良いことに、彼女たちはおしゃべりをやめない。 「最上階のフロア全体がお店になっていてね、すっごく高級な感じだったよぉ。入口からちらっと見えた夜景も綺麗だったし!」 「え~、行ってみたいですー!」 「でも、紹介がないと入れないんじゃね……。あー、誰か知り合いに会員の人、いないかなあ」  そこへ、外出していた課長が戻ってきた。 「順調に進んでる?」  彼女たちは一瞬でパソコンに向かい、今まで真面目にやっていたような姿を見せる。 「お疲れさまです、課長! もちろんですよお」 「そうかそうか。次の企画のプレゼン、楽しみにしてるからね!」 「はーい」  よく見る光景。内心、うんざりしている。  私と理沙は、女性では二人きりの同期だ。そういうこともあってか、よく比べられることが多い。  理沙のことはよくわかってる。  彼女は美人だし、社交的で要領も良い。彼女が出した企画は、いつもだいたい通る。上司たちからの評価も高いし、周囲からとても気に入られている。  でも、私は知ってる。彼女が人には見えないところで、よく手を抜いていることを…………。
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