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何言ってるの……?
私の頭は、真っ白になった。
「多田さん。それはどういうことかな?」
課長から厳しい視線を向けられ、慌てて反論する。
「違います! 盗み見たのは私じゃなくて、小宮山さんで……」
「え……酷い、多田さん……。私のせいにするなんて……」
彼女は、目からポロポロと涙をこぼしている。
彼女の隣りに座る男性社員が、「泣かないで理沙ちゃん」と慰める。そして課長が私に向ける、冷たい視線。
何これ……。なんで、こんなことになるの…………?
そこへ、思わぬ人からの声がかかった。
「すみません。宜しいでしょうか?」
鞘川さんが、手を挙げている。
「差し出がましいことを申し上げますが、多田さんの話もしっかりお聞きになられたほうが良いのではないでしょうか?」
鞘川さんが、まさかそんなことを言ってくれるとは思っていなかった。
涙を拭っていた理沙が、一瞬、眉間にしわを寄せた。
「まあ、確かに……。鞘川くんの言う通りだな。多田さん、話したいことがあるなら話してみなさい」
課長に促され、私は口を開きかけた。
その時、ハンカチを口元に当てていた理沙と目が合う。
彼女は、恐ろしい目で私を睨んでいた……。
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