うわさばなし

4/9
前へ
/9ページ
次へ
 外出を控える午前二時。灯りもない刻限。  両親が寝静まったのを見計らい、慎重に足音を立てず、滑るように外へと飛び出した。  頼りない月明かり。  虫すら鳴かない。耳が痛くなるほどの静寂に不安が膨れ上がり身震いする。  すくむ体を叱咤し歩みだした。向かうは、彼から聞いた出没現場の公園だ。  住宅街から離れており、ブランコだけが設置された質素な公園だ。  雪子が幼い頃から、誰も遊ばない。何処か気味の悪い印象を抱かせる場所。  帰りたい弱音を奥に隠し、由実の元に急いだ。いつの間にか早足から駆け足に変わっていた。  暫くして。人影が見えて、安堵する。 「由実!」  駆け寄って、全身に襲いかかる異変に気が付いた。  どくりと心臓が大きく跳ね、呼吸すら忘れる。冷水を浴びたかのように、血の気が失せていくのが分かった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加