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「――という都市伝説だよ」
「怖すぎでしょ。やだ」
今にも泣き出しそうになる。
不満をこぼせば思った以上に情けない声になり、羞恥から顔が熱くなった。
怖がりな自分は聞かない方が良いと、友達はよく言う。
その通りなのだが、カリギュラ効果が発動し、積極的に関わってしまうのは悪い癖。後悔しても遅い。
がやがやと騒がしい廊下の片隅。怖い話を語ったクラスメイトが、困った顔で謝罪した。
彼にはなんの落ち度もない。是非教えてくれと、ねだったのは自分だ。自業自得である。
慌てて、気にしないでと明るく振る舞った。
女子生徒二人が行方不明になったばかり。たちの悪い噂に、必要以上怯えてしまった。
「一応、忠告するけど外は出歩いては駄目だよ。午前二時なんて女性一人は危ないからね」
涼やかな声音で注意を残すと、彼は恭しく一礼をして、立ち去った。
綺麗な所作は紳士を彷彿とさせる。
その背中が見えなくなっても、消えた方向を眺めていると肩を叩かれた。
「よぉ! 今、だれと話してたんだ?」
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