決戦は水曜日

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「え・・・・・?山田君?」 「七瀬、おかえり!座って?」 入口で山田君を店の中に見つけた私はそのままでいると山田君が入口まできて私の手を掴んで中の席に座らせた 「待ってて!」 私を座らせると 慌てて厨房に入っていった 「???」 老舗の蕎麦屋の店内には不釣り合いなお姫様みたいなワンピースを着たまま、私は訳が分からないけどとりあえず待った キョロキョロ見渡しても店内にも厨房にもお父さんとお母さんの姿はない 「七瀬、お待たせ!!」 「山田君?」 しばらくして山田君が私の席に うちの看板メニューの、天ざるそばを運んできた 「・・・・天ざるそば」 「食べてみて?」 「・・・・もしかして山田君が作ったの?」 「うん」 私はお姫様みたいなワンピースのまま 汁が飛ぶのをきにしないで夢中で食べた 山田君の作った天ざるそばは 素人が作るレベルなんかじゃなかった 蕎麦の細さ、麺のコシや茹で加減 天ぷらもカラッと揚がっている 「山田君、凄い・・・・凄いよ?美味しいし、プロみたい」 「天ざるそばってさ、めっちゃ難しいんだ」 「?」 「蕎麦ももちろん打つのも茹でるのも難しいし、天ぷらだって処理に手間がかかってて、揚げる衣の硬さも油の温度も時間も、毎回決まってなくて全部感覚で決めないと同じものにならないし。何回練習しても同じくは作れないんだ」 「・・・・・」 「これだって今日出来ても明日には同じ蕎麦が出来ない。オレにはまだ蕎麦の声や天ぷらの声が聞こえないから」 「・・・・・」 「おやじさんが言ってた。蕎麦を作りながらからだで感じて音を聞き取って、その日その時の茹で加減や天ぷらの揚げ加減を決めるんだって。それができないと一人前じゃないって」 「・・・・・・」 「だからオレ、おやじさんに言ったんだ。 『オレが毎日同じ天ざるそばを作れるような一人前の蕎麦職人になったら、亜里沙さんと結婚させてください!そしておやじさんの跡継ぎにしてください』って」 「?!」 「そうしたらおやじさんに 『亜里沙と付き合ってるのか?亜里沙には結婚の了承を得たのか?』って聞かれたから『まだです!』って言ったら『そっちが先だろうが!!』って怒られたけど」 「結婚・・・・?!」 「もちろん、付き合ってもいないしさっ!七瀬が良ければだよ?良ければだけど・・・・・・・ オレ、蕎麦職人になりたいと思ったきっかけ、七瀬なんだ。七瀬が高校生の時、あまり笑ってないし大人しくて。 でも、お弁当に入ってるおやじさんの蕎麦食べてる時はニコニコしてて、幸せそうで・・・毎日食べてるのに飽きないで美味しそうに七瀬が食べてる蕎麦ってどんな味なんだろうって気になって、そして食べたら美味しくてさ、七瀬が笑顔になるのも分かるなーって思った。 オレもこんな蕎麦作れるようになって七瀬に食べてもらいたいって思って そのうち一緒に働いて一緒に仕入れしに行ったりしてるうちに、七瀬の笑った顔、隣で見ていて思ったんだ、ずっと一緒にいたいって。」 「山田君・・・・・」
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