それから

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「わあ・・・・きれい!」 そこは隣町に行く山道の峠で 外灯もなくて山の中で明るいものは何もないから 車のライトを消すと辺りは真っ暗で 車から降りて空を見上げると星がとっても綺麗だった 夜は車があまり通らない道みたいで 静かな場所に私たち2人だけしかいない 「三浦から七瀬が久住さんに口説かれてるの聞いた日 オレ、それ聞いて冷静じゃいられなくなってその日一晩中、町を走ったって言ったでしょ?」 「うん・・・」 「その時さこの峠も走ったんだ。この峠越えて隣町まで行った。その時、この場所見つけたんだよね。」 「・・・・」 「この峠登りキツイじゃん? 冷静じゃない自分には丁度良くて。 でもさすがにへばってさ。ここで道に寝転んだんだ。 そしたら星がすっごく綺麗で」 「・・・・」 「あー、七瀬と一緒に見たいなーって・・・・その時思った」 「山田君・・・・・・」 明かりはないから真っ暗だけど 暗闇に慣れてきた目で横を見ると 星空を見上げる凄く綺麗な山田君の横顔があって 私は星空から山田君の横顔に視線を移したまま 目を逸らせなくなった 私の視線に気がついた山田君は 私の手を握りしめて 目を逸らさないまま私にキスをした それから 私たちはキスして抱きしめあって、キスをして 何度も何度も、星空の下で唇を重ねた 初めて手以外に触れた 山田君の唇も胸の中も とっても温かくて安心した ドキドキと安心が混じりあって ずっとキスしていたかったし ずっと抱きしめていて欲しかった お互い何も言わず夢中で何度目かのキスをしていたその時 遠くから車のライトが見えて 2人とも我に返って唇を離した 「・・・・・お母さん心配するよね?・・・そろそろ送るよ」 「・・・・・うん」 私たちは帰りの車内ではまた無言で でもしっかり指を絡ませて手を繋いでいた
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