渦巻く陰謀

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渦巻く陰謀

 吹雪がおさまるとそこは真っ白な世界だった。  氷に閉ざされた静かで荘厳な大地。 広大な自然を前にして、独りぼっちの自分の存在がいかにちっぽけなものか、グレゴリーは思い知らされていた。  この(けがれ)なき白い大地は弱い者を凍てつかせ、情け容赦なく懐に取り込む。  グレゴリーは大自然を相手に虚勢を張るかの如く、背筋を伸ばし胸を張った。 ***  蛮勇を誇るコサック隊は小隊の単位で次々とカムチャッカ半島の先住民たちを蹂躙していき、時に行き過ぎた強奪は部族を根こそぎ滅ぼしていった。  本格的なカムチャッカ半島制圧に向けて、大公国から調査団が送り込まれた。  彼らの主な任務は、コサック隊による武力制圧状況の調査と土着民の実態を掴むことだ。  グレゴリーが隊長として調査団への随行を任されたのは信頼からではなく、彼の失脚を狙う勢力の黒い思惑があってのことだった。    警戒していたグレゴリーだったが誤算もあった。それは信頼していた部下の裏切りだ。  おそらく馬に毒を盛られていたのだろう。 「事故に見せかけ亡き者にしろ」と命を受けた裏切り者が、自分の小隊に居たかと思えば情けなくもあった。
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