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流浪の果に
グレゴリーは太陽の位置から方角に見当をつけた。
「窮地に猟師小屋を見つけることができた。天にはまだ見放されていない」
自らを鼓舞するようにそう言うと、グレゴリーはまっすぐ西を目指した。
海岸線に出れば現在地の手がかりも見つかるはずだ。
小屋に残されていたトナカイ肉をかじりながら2日歩き、ついにグレゴリーの鼻先が潮の香りを捉えた。
曇天の空と、氷に閉ざされた海の境界は曖昧だった。
地鳴りのような音が微かに大気を震わす。疲れきった足を気力だけで交互に動かし前へと進む。
外気は剣となりグレゴリーを容赦なく突き刺す。
地鳴りの音が鮮明化し打ち寄せる波の音が聞き取れるようになると、グレゴリーはわずかに上体を起こし、一縷の望みを託して前方を凝視した。
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