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カフェとかでは間違ってもない『純喫茶』的な佇まいに、私は不思議と興味を引かれて目の前の道路を渡る。
レンガ調のタイルの貼られた洋館ふう二階建ての一軒家。
蔦はさすがに這っていなかったが、壁と窓枠のくすんだ色合いが雨に濡れそぼって余計に風景に沈み込み調和している。
上部が円形の、入り口の木製の扉はガラスが8枚、嵌め込んであり、中の黄色がかった明かりをぼんやりと外に投げている。
扉の周り、壁伝いに植え込みがずらっと並んでいる。
何の植物だろう…
花とか咲くのかな。
扉の上には板が掲げてあって、洒落た字体の文字が彫り込んであった。
『喫茶 紫陽花』
あじさい…
雨が嫌いな私でも、入っていいのかな。
そんなことを考えながら、私は引き込まれるように取っ手に手をかけて開けた。
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