【 幼馴染 】

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【 幼馴染 】

「そ、そう、興奮するなよ、瑞穂(みずほ)……。他の客もいるんだぞ……」  私を落ち着かせるように、孝太は小声で両手を広げ、お馬さんドードーというポーズをする。  カウンターの向こうにいるメガネをかけたパパも、顔の前で人差し指を一本立てながら鼻の先に付け、何やらシーシーというポーズをしている。  周りのお客さんは皆、私の方に視線向け、何があった?と気にしているようだ……。  私は急に恥ずかしくなり、一度頭を下げて、苦笑いしながらゆっくりと椅子に座った。 「だ、だから、アレの答えが知りたいのよ……」  保育園からずっと幼馴染だった孝太に、小さな声でもう一度聞く。  まったくしょうがねぇやつだなという表情をしながら、孝太が私を見ている。 「この内容見る限り、アレっていうことだよ……」 「だ、だから、そのアレが知りたいの……」 「瑞穂、お前、これ読んで分かんないの?」 「分かんない」 「分かれ」 「教えて」 「自分で考えろ」 「考えれない」  答えに辿り着かない無意味なやり取りが続く。  いい加減、孝太も(あき)れ顔だ。 「あ~、もう~、いいか。この内容をもう一度、初めから読んでみろ」  孝太がその紙切れを乱暴に私に手渡す。  私はその紙に書かれた内容をもう一度読んでみた。 「『瑞穂へ。僕はずっと君のことが気になっていました』……」 「お前、自分あての手紙をよく人に口に出してしゃべれるな」 「今、読んでるんだから、静かにして!」 「はい、はい……」 「『僕は君のその笑った時にできる八重歯が好きです』……」
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