49人が本棚に入れています
本棚に追加
【 幼馴染 】
「そ、そう、興奮するなよ、瑞穂……。他の客もいるんだぞ……」
私を落ち着かせるように、孝太は小声で両手を広げ、お馬さんドードーというポーズをする。
カウンターの向こうにいるメガネをかけたパパも、顔の前で人差し指を一本立てながら鼻の先に付け、何やらシーシーというポーズをしている。
周りのお客さんは皆、私の方に視線向け、何があった?と気にしているようだ……。
私は急に恥ずかしくなり、一度頭を下げて、苦笑いしながらゆっくりと椅子に座った。
「だ、だから、アレの答えが知りたいのよ……」
保育園からずっと幼馴染だった孝太に、小さな声でもう一度聞く。
まったくしょうがねぇやつだなという表情をしながら、孝太が私を見ている。
「この内容見る限り、アレっていうことだよ……」
「だ、だから、そのアレが知りたいの……」
「瑞穂、お前、これ読んで分かんないの?」
「分かんない」
「分かれ」
「教えて」
「自分で考えろ」
「考えれない」
答えに辿り着かない無意味なやり取りが続く。
いい加減、孝太も呆れ顔だ。
「あ~、もう~、いいか。この内容をもう一度、初めから読んでみろ」
孝太がその紙切れを乱暴に私に手渡す。
私はその紙に書かれた内容をもう一度読んでみた。
「『瑞穂へ。僕はずっと君のことが気になっていました』……」
「お前、自分あての手紙をよく人に口に出してしゃべれるな」
「今、読んでるんだから、静かにして!」
「はい、はい……」
「『僕は君のその笑った時にできる八重歯が好きです』……」
最初のコメントを投稿しよう!