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【 ドラキュラ? 】
「ねぇ、孝太。この『君のことが気になっていました』ってどういうこと?」
「そいつが、お前のことを気になってるんだろ……」
孝太は、呆れ顔で左手で頬杖をつき、右手に持った少し長めのスプーンで、パパの作ったチョコレートパフェを一口パクッと食べた。
「それに、この『八重歯が好き』ってどういう意味なの?」
「だから、そいつがお前のそのドラキュラみたいな八重歯がお好みっていうことなんだろ……」
「ドラキュラ?」
「ああ、ドラキュラ」
「ド、ドラキュラ?」
「二度同じこと言うな」
孝太の目は、完全に死んだ魚の目だ。
無関心、無表情。こんな私の一大事に、幼馴染のこの孝太は余りにも冷たい。
いや、冷たいどころではない。
今、大きな欠伸をしやがった。このやろ。
気を取り直して、一度咳払いをしつつ、その手紙の先を読み進めてみる。
「んんっ、『君はいつも太陽のようだ。君はいつも夜空に浮かぶ満月のようだ』って、何かおかしくない? この文章。私は太陽なの? 月なの? どっちなの一体?」
「お前のことが眩しく見えるって言いたいんじゃないの……? そいつが」
私のダメ出しに、孝太は銀色のスプーンを三度振りながら、だらしなく口を開けている。
私はもう一度、気を取り直して、更にその先を読み進めた。
「『君のその小振りなマスクメロンのような豊満な胸。桃太郎に出てくる形の良い桃のようなお尻……』って、どういうことなのよ!」
「声が大きい……。落ち着け、瑞穂……」
また周りのお客さんが、私を顔を心配そうに見ている。
少し落ち着こう……。
「こ、これ、何かやらしくない……?」
「やらしいな」
「変な目で見てるよね?」
「見てるな」
また、孝太との無意味なやり取りが続く……。
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