【 探偵同盟 】

1/1
前へ
/13ページ
次へ

【 探偵同盟 】

 しかし、そのラブレターの最後まで読んでも、誰からのものか名前が書いていなかった。 「こ、このラブレター、誰からだろう……?」 「知らねぇよ」 「でも、このラブレター、何かのノートの切れ端みたいに、左側がギザギザに破られているみたい……」 「急いで書いて、綺麗に破れなかったんじゃねぇのか」 「ねぇ、孝太。これって誰からだと思う?」 「知るか」 「もっと、興味を持って。私の一大事なのよ」 「一大事?」 「そう、一大事。幼馴染の一大事は、放っておけないでしょ?」 「ま、まあな……」 「じゃあ、誰か推理して。このラブレターを出した人を探し出して」 「探し出す?」  私は、眉間にしわを寄せながら、孝太のマヌケ面を見つめる。  すると、観念したのか、孝太は協力すると言ってくれた。 「で、そのラブレターのあった場所は?」 「学校の教室の私の机の中」 「は? 何でそんなところにあんだ?」 「そんなの知らないわよ」 「で、それを見つけたのは、何時ごろ?」 「私が部活から帰る時だから、夕方の6時半ごろ」 「そこに、誰かいた?」 「誰もいなかった」 「ということは、ホームルームの時間から部活が終わるまでに、お前の机の中にそれが入れられたということになるな」 「そうね。5時から6時半までの間の1時間半の間ね」 「お前の机の中にそれを入れた犯人は、お前がそれを見つけたかどうか必ず確認したいはずだ」 「なるほど。犯行を犯した犯人が、また現場に戻ってくるっていう、あれね」 「ちょっと違う気はするが、まあ、そんなものだろう……。俺だったら、明日の朝早く教室へ行ってお前の机の中を確認するだろうな」 「そうか、ちゃんと見つけたか、犯人は確認したいもんね」 「ああ。明日、俺が朝早く行ってそいつを待ち伏せてみようか?」 「お願い。そうして、孝太」  私は彼の手を両手で握り、探偵同盟を組む。 「お前、楽しそうだな……」  孝太は苦笑いしながら、なぜか目が泳いでいる……。 「孝太! 絶対に探し出してよ! このラブレターの犯人を!」 「犯人じゃねぇけどな……」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加