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【 犯人探し 】
翌日、孝太は朝早く学校へ行ってくれたよう。
いつもは私が、一軒離れた孝太の家に朝寄ってから、ふたりで自転車に乗り、一緒に高校へ通っていた。
この日は、孝太のお母さんが、「朝早くから学校へ出て行ったわよ」と教えてくれたのだ。
私が教室のドアを開けると、孝太は既に自分の席に座って、机に突っ伏し寝ていた。
私は徐に、孝太のクリクリ頭を小突く。
「痛てっ! 何すんだよ」
「どう? 分かった? 犯人?」
「ああ~、分かんねぇ~。窓の外から教室を見てたけど、それらしいやつは現れなかった……」
「私の机の中、探してた犯人はいなかった?」
私は孝太の座っている前の席に座り、椅子の背もたれの上に両手を置いて、向かい合って詰め寄る。
「多分……」
「多分って何よ! ちゃんと犯人を見つけ出すのよ!」
彼は、欠伸をしながら、そのクリクリ頭を掻きむしる。
「犯人、犯人って、何か悪いことしてる訳じゃないだろ……」
「これは歴とした犯罪よ。私の心を惑わす、私のハートを奪った犯人なのよ!」
「何だか、大げさなんだよな」
「で、一番早く教室に入って来たのは、誰だったの?」
孝太は面倒くさそうに、天井を見ながら思い出していた。
「ん~、確か、栄太郎だったな。最初に教室入って来たのは」
「それで、栄太郎くんは、私の机の中気にしてなかった?」
「全然。鞄置いて、すぐに部活へ行っちゃった。あいつ、バスケ部の朝練があるから」
「じゃあ、栄太郎くんじゃなさそうね。ちょっと背が高くてイケメンだから、残念だけど」
「何だ、その残念って……」
「で、次に来たのは、誰だったの?」
「次は、竹本。あいつ、いつも朝早く来て、何かフィギュアの雑誌ずっと見てるから。今もそこ座って見てるぜ」
孝太はそう言うと、彼の方に親指を向けた。
教室の後ろのドア付近に座る彼を見て、私はゾッとする。
彼と目が合ってしまったのだ……。
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