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2.嵐の中の出会い(2)
目を開けると
「――えっ、ウソ?」
ナツコはたつまきの中で、宙に浮いていた。
(――なに、これ?まるでドロシーみたい)
本好きのナツコは、このあいだ読んだ「オズの魔法使い」のことを思い出したが、アメリカ・カンザス州で少女ドロシーをまきこんだたつまきとはちがって、この日本のたつまきのなかには「西の魔女」にはいなかった。そのかわり――
「なに、あれ?」
ナツコの目の前には、なんと三匹の大きな「竜」がいた。
それも、「エルマーのぼうけん」に出てくるような、つばさのある西洋ふうのものじゃない。「たつのこたろう」に出てくるような、長々としてヘビっぽい東洋ふうの竜だ。
三匹の竜のうち、二匹は金と銀のきれいな色をして、よくにている。もう一匹は黒い竜で、金と銀の二匹より胴まわりなどがずっと太く大きい。
それら三匹がすさまじい声をあげながら渦を描き、くんずほぐれつの戦いをしているようなのだ。
どうやら金と銀の二匹が力を合わせて黒い竜に立ち向かっているようだが、なにせ黒い竜は大きく力も強いようで、金銀の二匹は苦戦している。
銀の竜が右手(前足?)になにか赤い宝石のような珠を持っているが、黒い竜はそれをうばおうとしているらしい。銀の竜の首にかみつき、珠をおさえようとするが、金の竜が黒い竜のシッポをとらえて、そのじゃまをしている。
それで思わず黒い竜が銀の竜の首をかむのをゆるめると、銀の竜は力つきたのか下に落ちていった。
黒い竜はいまいましそうにうなり声を上げると、そのトゲのついた大きなシッポを金の竜にふりおろした。
おもわずナツコが
「あぶない!」
と声をかけると、気づいた金の竜は攻撃をよけることができた。
黒い竜は身をよじって金の竜をはね飛ばすと、銀の竜を追いかけるようにたつまきの外に出た。
すると、今までふきあれていたうず状の風がピタッとやみ
(えっ、うそ?)
ナツコはまっさかさまに下に落ちた。
「きゃーっ!」
落ちながら、金色の竜が口を開けて自分におそいかかってくるのが見えて、ナツコは恐怖で気をうしなった。
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