とんだ間違い

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「昔は楽しんだものさ」 にや、と笑ってネクタイを締める早川が呟いた。 三木はもはや弾切れでベッドの上でくたばっていた。冗談じゃない、こんな男だとは思わなかった。目を覚ましたらいつもの早川が後始末を終えて帰る準備をしていた。 まるで自分が抱かれたみたいじゃないか。リードも糞もなかった。ただ、とてつもない複雑な気分だ。なにがどうなっているのか。 いや、これは元から間違いから入ったのだ、勘違いの留守番電話、早川の無邪気な悪戯、早川の昔取った杵柄、三木の性癖。すべて間違い、間違いが全部からまってこうなって、これからどうなるんだろう、と三木は不安げに早川を見上げた。 「兄貴、俺、もうあんたの横にいられねえ」 「どうして」 「だって兄貴を襲っちまったんだ、それ相応の覚悟はありますよ。とんだ間違いを犯しちまった」 早川が笑う、楽しげに声を立てる。 「そうだな、とんだ間違いだ。だが俺にとって、あの電話はいい間違いだったよ。なんせ金のかからない手頃な愛人を見つけたんだからな」 ミキ、愛してるよ。 そして、あの電話越しに聞いた色気薫る声で男は囁いたのだった。 【とんだ間違い】完
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