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「姫ちゃん……ありがとう……とっても嬉しいよ……」
俺は、シャワーを浴びて出てきた全裸の姫ちゃんを抱き寄せた。
柔らかい感触に俺の身体は喜びを表している。
「でもね……姫ちゃん……あいつに触られたから、俺に綺麗にして欲しいってのは違うよ」
「猟さん! 汚いから! あたし、汚いから? だから!! 抱けないんでしょう? 知ってるもの! 猟さんがあたしの事汚いって思ってること知ってるもの!!
誰とでもセックスするお金で買える安い女だって、そう思って、だから汚いって、バカな女なんて抱く価値すらないって、そう思ってるって知ってるから!!」
姫ちゃんが怒声を上げている。
初めて俺に見せる生の感情を……
俺はちゃんと受け止めてあげたかった。
「姫ちゃん……俺は毎日姫ちゃんの身体を求めてしまいそうになっているよ。君を決して汚いなんて思っていない。
大事に思っているからこそ、いい加減な事なんかできないって、いつも思っているんだよ。そうじゃなったら、とっくに君が寝ているところをパンツをはぎ取って生で出し入れして、あああ!って声を上げているさ。
でも、そのたびに思うんだ。
そんな事で、繋がっても、ホントの姫ちゃんを求めた事にはなれなくて、俺の心を真正面からぶつける事が出来なくて、だから……
俺は姫ちゃんを抱けない。
俺が君を愛しているって言えば、きっとこの場は楽になる。でも、それは、これからもずっと続けていける事じゃない。
……俺はずっとセイラちゃんを愛しているから、今も、愛しているから。
正直に言うよ。
俺は後悔している。
君を助けた事を……
俺が失った物は君がこれから得ていくであろう希望と天秤にかける事は出来ない。
だから、いくら君がこれから、一年たったら、全てをリセットして生きていく君が得るものは尊いのだろうと言い聞かせても、やっぱり、俺は後悔している。
俺の失う物の大きさと比べて……
すまない……
勝手に助けて……
勝手に後悔して……
ゴメンよ。
だから、君を抱くことが出来ない。
抱いてしまうと……
俺はきっと君を愛してしまう……
俺はセイラちゃんがいないと、恐らく、君を苦しめたあいつの様になってしまう。
平気で人の尊厳を踏みにじれるような卑しい人間に身を落としてしまう。
俺にはセイラちゃんが必要なんだ。
俺のことを想うなら……
俺の心に入り込まないで欲しい」
温かい、まだ、風呂の水気がぬぐいきれない彼女の身体を俺はそっと離し、泣きぬれる姫ちゃんをベッドに寝かせて、俺は部屋を出た。
外は深夜で、仙台の街はずれのここでは遠くの幹線道路の音さえも静まり返り、天には綺麗な星が見えていた。
くうう……
あぶねー……
今夜はやっちまうとこだったぞ!
すげえ破壊力だな、姫ボディ……
イヤ、ホントに……
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