7 鈴木博

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「行っちゃったね……」 「そうだね…… 最後にそうならないためのアドバイスしようと思ったんだけど」 「1分しか聞いてなかったよ…… 言い方じゃない? 猟さんの……」 「ええ、俺のせい?」 「多分にあると思うよ…… こう、もう少し、マイルドにさ…… っていうか、気持ち悪かったよ……」 「ああ、そうだね…… 悪役ってさ…… 基本気持ち悪くないと…… 正義側が買った時の爽快感が半減すると思ったからさ」 「猟さん…… あたしたちが正義側じゃ無かったっけ?……」 やれやれと天を仰ぐ姫ちゃんは続けた。 「それにしてもさ、猟さん…… どうする? あれが人を信じるって事?」 「違うよ…… 意地さ。何回となくされているんだろうな…… だから、ある程度こういう事態を常に織り込んでいる。そんな反応だ」 「じゃあ、私があんな奴に触られたのも無駄って事?」 「いいや…… メインはこれじゃあない…… この程度の事じゃあないよ。 これはホンの余興さ。 黙って、気が付いたら何もかも失ってたなんて、そんな簡単な終わらせ方は許さない。俺との会話であの人は、何のことかぐらいは気が付いただろう。 そうさ、これから眠れない毎日を送ればいい。少なくとも、その程度で、すまされただけでもありがたいと思ってもらいたいぐらいだ」 俺は不敵に微笑んで、心配そうに、悔しそうな姫ちゃんに余裕の笑みを見せつけた。 「姫ちゃん…… きっと彼から近いうちに連絡が来る…… その時…… その時は…… 姫ちゃん…… ちゃんと、彼と決着を着けてくるんだよ」 「え? どういう事?」 「あいつは、きっと姫ちゃんを頼ってくる。そうせざる得なくなる…… 残るのは君だけだと思っているから…… そう君は思われているから…… そんな風に簡単に操れると思っているから。 それが…… 君の望むところじゃないのなら、きっちりと君の過去と決別して来るんだ。君の全ての始まりを…… 君の間違いを…… 訂正して来るんだ…… 君なら…… 今の君なら、それがきっと出来ると俺は信じているよ」
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