東の国の王の側室、西の国の王子の好奇心

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美しい東の国の王は、逞しい西の国の前王を抱きしめる。逞しい男を抱き上げて、ベッドへと誘う。 「愛しい人、やっとあなたを手に入れた」 「何だと、俺は人の物にはならない男だ、何故なら俺は王だからな」 「ええ、そうでしょうとも。私の感情を揺さぶり、私の感情を支配する唯一の王だ。物言わぬ人形ではなく、貴方のままで抱ける日が来るとは思わなかった。神よ感謝致します」 「待て、抱くだの俺のままでとはどう云う事だ。体が動かない。ここは何処だ、やめろ、よせ、近づくのは寄せ!ああ、触れるな…俺の何にも触れてくれるな……」 「それはできませんよ、私の可愛い人。貴方ともっと触れ合う為、随分苦労したのですから……これからその話もしてあげましょう、どうして貴方が後孔に指を差し入れても素直に受け入れる事が出来るか……をね」 なぜ、どうして。男は解らない。はじめて襲われるかのように、処女のように怯えを隠さず、泣き、喚き、懇願する。が、それも虚しく男は王に貫かれる。願いが成就した東の国の王の幸福な顔と言ったら。 最早この世の者ではないような、妖しさだった。 これから随分と長い愛の享受をするだろう。悲鳴とも嬌声ともとれる声を出している東の国の側室と、やっと望みが叶った、東の国の王。 アイダ達は豪奢な新しい側室部屋を後にする。 きっと男は、東の国の王の寵愛と慈悲を沢山受ける事の出来る幸福な側室となり、テトとアイダは西の国で良き王、そして良き医者になれるだろう。 彼等は良き薬を作り、病人に喜ばれる。 東の国の王が側室を娶り、西の国の王の好奇心は満たされ、医薬の発展は進む。 そして、またどこかで、好奇心の種は落ちて、また何かが芽生えるのだ。 そうして我々は、繁栄、進化を成し遂げ続ける』 【東の国の王宮の図書館長の日誌より】 【東の国の王の側室、西の国の王子の好奇心】完
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