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おでん
「お母さん、出掛けてくるから二人で仲良くおでん食べるのよー」
『あーい』
今日はお母さんが近所の人達とご飯を食べに行くらしく、妹と二人で留守番だ。
「おい、7時になったけどそろそろ飯食うか?」
「うん、食べよう。」
『いただきます。』
俺と妹の間に置いてある3人用の鍋。
俺の一番大好きなちくわ。これを食べなければおでんを食べたとは言えない。
俺はちくわを箸で掴むと、同じように妹のもちくわを掴んだ。
「おい、」(俺の)
俺は妹に「おい」とだけ言い、「俺のちくわだ」というのは目力で伝えた。
俺と妹の箸に掴まれているちくわは鍋の上にプラプラと浮いている。
「ねぇ、」(私の)
ちくわだよ?え、ちくわってこの岡田家では私が食べるっていうルールじゃないの?お母さんは食べられたとしてもお前みたいなクソにこのちくわを食べる資格はない!
『ん、んんんん!!!!!』
俺達は箸で掴んでいるちくわを自らに寄せあう。
『んんんんうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
リビングに双子の力んで漏れる声が響く。
無言の戦い。このちくわをどちらが取るのか。
『うぉりゃぁぁぁぁぁぁいいいいい!!』
「ドボン」
二人の持っていた箸からちくわが滑り、真下の鍋の中へ落ちる。
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