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「ウエディングベル」
ウエディングベルが鳴ってる
どこまでも続く青空が2人を祝福してる
初めてあなたと会ったのは私が12才のときだった。私より5才年上のあなたと私は突然家族になった。
父が病気で他界し、母が再婚した相手には息子が居た。それがあなただった。
「はじめまして。今日からよろしく」とあなたは目を細めて笑った。
今でも鮮明に覚えている。
あなたの笑顔、優しい光が宿る瞳を。
私はあの時から、あなたに特別な感情を抱いていた。
兄妹だけど血の繋がりはない。
だけど私達は家族だ。
この想いを告げたところで、どうしようもない。
私はあなたを下の名前で呼んでいた。
「お兄ちゃんって呼んでくれないの?」ってあなたに何度も聞かれたけど、私は1度も呼ばなかった。呼んでしまったら認めることになる。私があなたの妹だと。
そんなことをしても、あなたに想いを告げる勇気もない。告げたところで、どうにかなるわけでもない。
けれど兄と呼ばないことが、叶わない想いへの私なりの密かな抵抗だった。
兄は今日、結婚する。
もちろん私ではない、愛する大切な人と。
この涙の理由は悲しいからじゃない。
心から兄の幸せを願っている。
「お兄ちゃん、おめでとう」
「ありがとう。やっとお兄ちゃんって呼んでくれたな」
ウエディングベルが鳴ってる
どこまでも続く青空が2人を祝福してる
≪END≫
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