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夜明けのホタル
夜明けを遠ざけるように降る雨。
深く重く心をじわじわと侵食していく。
消えていく青。
消えていく、あの人の、カタチが――ゆっくりゆっくり崩れていく。
もう無理だ駄目だ…………。
突然ふわっと目の前に青く光る小さなホタルが現れる。
――どうしてこんな場所に?
侵食されてしまった心は虫食いのように穴だらけになってしまい、大切なものが抜け落ちてしまったようだ。でも……青の光を見ているだけで涙があふれてくるの。どうして、こんなにも胸が苦しくなるんだろう。
ホタルはふわふわと顔の近くを飛び回り、それはまるで慰めてくれてるようだった。
いつまでもそうしているから、どうしてこのホタルだけ……しかもこんな雨の中を……? と不思議に思った。
しばらくしてホタルは疲れたのか、肩にそっと降りてきた。
……もう、考えるのやめよう。
闇が、広がっていく。果てしなく深く底がない。
『――――』
そうしたい、放棄したい。でも思い出せない言葉が引き止める。
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