おかしな人

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

おかしな人

 あの人は私の思惑通りに言葉を発した。  いや、思惑通りとは少し違うか。  その言葉は私を馬鹿にしていると捉えられる言葉だが、私は盛大に笑った。  つまらない返しではなく、その言葉を人に向けるのはどうかと思ったから笑った。  相手を悪人のように仕立て上げることに楽しさを感じる。  人を下げる行為はクズだといわれたことがあるが、かまわない。  自分の心を保つためにそう考えるようになった。  心の隅から隅まで善良な人間なんてはたしているのか?  おそらくいないだろう。  誰しもが底が見えない濁ったところがあるだろう。  それを考えるとこの世は泥沼だらけな気がしてきた。  私の目の前を通った白い服の人だって、お金をもらわなければ働かないだろう。  本人に直接、お金をもらわなければこの仕事やらないですよね、と尋ねたことがある。  それらしい回答はえられず、はぐらかされてしまった。  人の命を救うのにお金が発生することも何か違和感を感じる。  私は人間をやめて動物になりたいと訴えると、ベッドしかない部屋へと閉じ込められた。  おかしな人の基準はいつ誰がつくったのだろう。  たくさんの人の声が集まってそう構築されたのだろうか。  なら私は自然に帰ろう。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!