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私が晴輝に出会ったのは大学生の頃で晴輝と私は同じ大学に通っていて、晴輝は理工学部で私は文学部に在籍していた。
晴輝と私は同学年で同じアーチェリーのサークルに所属していて、ここで知り合って大学2年生の頃から付き合いが始まった。
大学卒業後晴輝は自動車製造関係の会社に就職して、私は旅行会社に就職した。
晴輝はアーチェリーがとてもうまくて、大学を卒業後社会人になってからもアーチェリーを続けて、全日本ターゲットアーチェリー選手権大会男子シングルスで優勝したことがある。
晴輝は、
「いつかオリンピックに出場したい!」
と話していたけれど、その夢を果たすことなく天国に旅立った。
社会人になってからの晴輝と私は、会社の仕事帰りに待ち合わせて食事に行ったり、休日は映画を観たり、テーマパークに遊びに行ったり、ショッピングをしたりして楽しんでいた。
4年程お付き合いして24歳になった晴輝と私は、お互いに結婚を意識していたと思うけれど、そんな時に晴輝が肝臓がんになっていることが発覚した。
晴輝は入院したけれど、ステージ4で肺にも転移していることがわかり、余命半年と宣告された。
この時の晴輝は、私の将来を心配して、
「志乃、僕と別れよう!」
と言ってくれたけれど、私はとても受け入れることはできなかった。
ある日、私は吐き気がしてお腹が気持ち悪くなった。
さして気にしていたわけではないけれど、念のために内科の医者に診察してもらったところ、妊娠していることが発覚した。
翌日、産婦人科に足を運んで再度診察してもらったところ、妊娠していることに間違いないと言われた。
この時私はこのことを晴輝に何と言って伝えたらいいのだろうかと少し迷いが生じた。
いっそのこと言わないほうがいいのではないかとも思った。
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