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アスレチックから降りて、木の下の芝生にレジャーシートを広げた。
大きめの二段重ねのお弁当箱と、もう1つ追加のお弁当箱を取り出す。
「うわっ、こんなにたくさん? 作るの大変だっただろ」
「そんなことないよ。でも足りないと困るから、ちょっと多めに作ってみたんだ。多かったら残してね」
「全部食べるよ。いただきまーす!」
咲弥くんがパクパクとお弁当を食べてくれる。私はドキドキしちゃって、なかなか箸が進まない。
「おいしい! 俺の好きなもんばっかだよ」
「よかった~。家族以外に食べてもらったことなかったから、不安だったんだ」
「家でもいつも料理してんの?」
「いつもって言ってもお弁当は残り物を詰めるときが多いし、朝は適当だから、ちゃんと作るのは夕ご飯くらいだけどね」
「十分すごいよ。ホント、結來はしっかりしてるんだな」
「うちはお母さんが忙しいから」
あの告白のときも、咲弥くんは私がいつも一生懸命だって言ってくれた。
でも勉強や当番をするのは当然だし、料理だって家族のために特別なことをしてるつもりはない。
そんな些細なことでも相手を褒めることができるのが、咲弥くんの素敵なところなんだと思う。
「これ、すっごいおいしい」
咲弥くんが箸でつまんだのは、卵焼きだった。
「ロケ弁とかにもよく入ってるけど、なかなかベストなあまさの卵焼きって出会えないんだよ。でも結來の卵焼き、最高!」
「ホントに? うちで作るときは弟用にもっとあまくするんだけど、それだとあますぎるかなって思って少し控えめにしてみたの」
「俺の好みなんて言ってなかったのに、完全に結來に読まれたな。あー、ロケ弁の卵焼き全部結來が作ってくれたらいいのに」
「大げさだな~」
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