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午後からは、残りのアスレチックをまわっていった。
最後に挑戦したのは、高い塔のようなアスレチック。あっちこっちのロープや網、輪っかのトンネルなどを登って行って、ついに頂上!
空中のグラグラ橋より、ずっとずっと高い。
「よっしゃー! アスレチック完全制覇!」
「すごい! 登っちゃったね」
アスレチックワールド全体が一望できる。
あんなに大変だった他のアスレチックが、ここからだとみんな小さく見えた。
「ここまで来るの初めて。妹と弟じゃ、登り切るのは無理だったから」
「俺だって、結來とじゃなきゃ来られなかったかもしれない」
「そんなことないよ。咲弥くんなら楽勝でしょ」
「そんなことあるんだよ」
咲弥くんが辺りを見回した。
下の方は人が多かったのに、登るにつれてどんどん人が減っていって、今ここには私たちしかいない。
「このアスレチック、コースの最後だけあって難易度高いんだよ。時間掛かるし、大変だから諦めてる人多かったじゃん。俺も1人だったら途中でやめてたと思う。でも結來が一生懸命だったから、俺が弱音なんて吐けないよなって思って」
「私は、咲弥くんの足を引っ張らないように必死で……」
「それどころか、俺が引っ張って行ってもらってたよ」
私だってきっと、1人だったら登り切れなかった。挑戦しようとも思わなかったと思う。
だけど咲弥くんが私の前を進んでくれたから、安心して登ることができた。
傍に誰かがいてくれるのって、こんなに心強いことなんだ。
今度は2人でゆっくりと、下に降りて行った。
私が先にロープから飛び降りて地面に着地、その後に咲弥くんも続いた。
「痛……っ」
「どうしたの?」
「指、ちょっとかすった」
咲弥くんの指を見ると、血が滲んでいた。
「待って。私、絆創膏持ってるから」
荷物置き場のカバンから絆創膏を取ってきて、咲弥くんに渡す。
「ありがとう。準備いいな」
「普段から持ち歩いてるの。私ドジだからよく指を切っちゃうことが多くて」
「マジで? 心配になるんだけど」
咲弥くんが、ふいに私の手を取った。咲弥くんの手、あったかい。
「料理もするんだから、気をつけろよ。俺が守ってやるにも限度があるんだから」
「さ、咲弥くんだって、撮影とかでケガしないでね」
「わかってるって」
咲弥くんの手が離れても、私の手にはそのぬくもりが残ってる。
「バスの時間までもう少しだけど、どうする?」
「あ、お土産コーナー見てもいいかな? 妹と弟に買っていきたいの」
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