6.友達

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次の日、咲弥くんは5時間目から学校に来た。 放課後になったらすぐ仕事に戻るんだって。 侍戦士は夏に映画がある。だから今はテレビと映画の撮影で大忙し。 なかなか一緒にいられないから、帰り道咲弥くんと駅まで歩くことにした。 「ごめん、結來はこっちだと遠回りだろ?」 「ううん、いいの。だって咲弥くん、わざわざ学校来てくれたのって……」 「結來に会いたかったから」 咲弥くんが当然のように言った。咲弥くん、どうして自然にそういうこと言えちゃうんだろう。 「そういえば、さっき鶴屋さんと喋ってたじゃん?」 「友達になったの。花凛ちゃん、咲弥くんと隅谷くんのファンなんだって」 「あ、咲慎の?」 「そう! 2人とも人気なんだね」 「俺と慎太郎は昔からセットで応援してくれる人多いんだよ」 咲弥くんがポケットからスマホを取り出して、画面を見せてくれる。 そこには咲弥くんと隅谷くんが仲良く肩を組んだり壁ドンしたり……なんかイチャイチャしてる写真が。 「こういうのSNSに上げると喜ばれるから、よく慎太郎と撮ってんだよね」 「へえ、2人ともイケメンだもんね。バズる、っていうんだっけ。すごいことになりそう」 「まだ出してない秘蔵のがあるんだけど、送ってあげるよ。鶴屋さんに見せたら盛り上がるんじゃない?」 「あ、私スマホ持ってないから……」 「おっと、そうだった。じゃ、やっぱSNSに上げとくか」 みんなスマホを持ってるみたいだったけど、私は高校生になってバイトしてからって決めてる。 お金掛かるし、どうせ使わないから…… って思ってたけど、今は咲弥くんと連絡できないのがちょっと残念。 「秘蔵って、どんなの?」 「これこれ」 咲弥くんがなぜかいたずらっぽく画面を向けた。 そこには、慎太郎くんを後ろからハグしてる咲弥くんの写真が。 「うわあ、恋人同士みたいだね。花凛ちゃんが見たら絶対喜ぶよ」 「……それだけ?」 「え? ええと、この写真は慎太郎くんメガネ外してるんだね」 「じゃなくて!」 むすっとして、咲弥くんが足を止めた。 「嫉妬とかしないの? 慎太郎とこんな恋人みたいな写真撮って」 「だって、男の子同士だから」 「男同士だってそういうことになるかもしれないじゃん」 「え!? 咲弥くん、隅谷くんが好きなの!?」 「そうじゃなくてー……」 突然、咲弥くんの腕が私の肩にまわって、抱き寄せられた。 「ヤキモチ焼いてほしかったんだけど?」 拗ねたような声が私の耳元で囁かれる。 い、息が掛かってくすぐったい……。 「どうして慎太郎くんとばっかりあんなことしてるの? 慎太郎くんと私どっちが好きなの? とか言わないんだ?」 「だ、だって、咲弥くんは……私のことが、好き、なんでしょ……?」 ああ、自分で言っちゃったよ! でも、私を彼女に選んでくれたのは咲弥くんだもん。 目を丸くした咲弥くんが、苦笑いをして私から手を離した。 「ごめん。試すようなこと言ったりして、俺バカだな。反省した」 「咲弥くんはなにも悪くないよ。その、私ヤキモチとか、よくわからなくて……かわいくない彼女でごめんね」 「なんで。結來はめちゃくちゃかわいいよ」 咲弥くんの両手が、私の顔を包んだ。 「さ、咲弥くん!?」 「結來、顔まっか」 こんなことされたら、真っ赤になるに決まってるよ。 周りに誰もいなくてよかった……。 ガタンガタン、と電車の音が近づいてくるのが聞こえる。 「やばっ、電車くる! 結來、ここでいいよ」 「咲弥くん、撮影がんばってね」 「おう! もうじき映画の撮影終わるから、そしたらデートしような!」 走り出した咲弥くんが、大きく手を振りながら叫んだ。 は、恥ずかしいよ……。 赤い顔が元に戻るまで、もう少し遠回りして帰ろう。
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