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花凛ちゃんに一緒に七夕に行けると話すと、「ホントに!?」と飛び上がるほど喜んでくれた。
「お祭りの日、お母さんお休みだったんだ。妹たちのことは大丈夫だって」
「やったね! 後は咲弥くんと慎太郎くんのスケジュールNGが出なければOKなんだけど」
「咲弥くんには私から話してみるよ」
咲弥くんから七夕の話は全然出てないけど、一緒に行ってくれるといいな。
「当日は浴衣着てこうと思うんだけど、結來ちゃんはどうする?」
「私は浴衣持ってないんだ」
お父さんがいた頃に買ってもらった浴衣は、今は柚のお下がりになってる。
着てみたいけど、買ってとは言えないもんな。
「じゃあ、私の着る?」
「でも、それじゃ花凛ちゃんが」
「私、浴衣いっぱい持ってるの。毎年夏のライブには浴衣で出る日があるから。それで良かったら貸せるよ」
さすがアイドルさん。浴衣を何着も持ってるなんて。
「貸してもらって、いいかな。お礼はできないけど」
「お礼なんていいのいいの。浴衣も着てもらった方が喜ぶよ。1回ライブで着ちゃったらもう次の年は着られないんだから」
うわあ、贅沢。
でも浴衣を着るなんて何年振りだろ。しかも咲弥くんの前でなんて、嬉しいけど恥ずかしい。
昼休み、咲弥くんを七夕に誘うと「もちろん!」と喜んでくれた。
「俺も誘いたかったんだけど、結來は家のことで忙しいかと思ったから」
「いつもは樹たちと一緒に行くんだけど、今年はお母さんが休みだったから私は友達と行っていいよって」
「友達かあ」
咲弥くんが私に顔を寄せる。
「彼氏とデートって言わなかったの?」
「い、言ってないよ。私なんかが彼氏って言ったら、お母さんビックリしちゃう」
「あ、『私なんか』って言ったな」
そういえば、『私なんて』禁止って言われてたっけ。『私なんか』でも、やっぱりダメか。
と、咲弥くんに手でほっぺをむにっとつままれた。
「約束破ったから、お仕置き」
「ひょ、ひょっとしゃくやくん、やめへよ~」
「あははっ、結來かわいー」
もー、咲弥くんってば。
「お取込み中、失礼しま~す」
驚いて咲弥くんから離れると、隅谷くんがいた。
「慎太郎かよ、脅かすな」
「教室だってのに人目もはばからずお熱いねえ。いくらみんな知ってるからってさ」
そ、そうだった。みんなにバレバレとはいえ、ここは教室。
学校ではあんまり咲弥くんと恋人っぽくしないようにしてたのに、油断しちゃった。
昼休みでそんなに人がいなくてよかった。
「花凛ちゃんから七夕のこと聞いたけど、咲弥その日行けんの?」
「夕方までだけどな」
「じゃあ花火は見られないな」
そういえば、七夕の夜は花火が上がるんだ。
柚と樹を連れて行くのはいつも昼間だから見たことなかったけど。
「ごめん、結來。花火は一緒に見られない」
「気にしないで。一緒に行けるだけで嬉しいから」
咲弥くんがちょっと寂しそうな顔をした。
七夕でもなんでも、咲弥くんはお仕事。喜んでくれる子供たちのためでも、やっぱり残念だよね。
「あ、あのね。七夕の日、私と花凛ちゃんは浴衣着るんだけど、咲弥くんと隅谷くんは……」
「浴衣? うわあ、結來の浴衣めちゃくちゃ楽しみ!」
「じゃあ俺らもそうしようぜ。当日は全員浴衣で集合な」
咲弥くんに笑顔が戻った。
隅谷くんと一緒に浴衣なんて、花凛ちゃん喜ぶぞ。
私も咲弥くんの浴衣、すっごく楽しみ。きっとかっこいいんだろうな。
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