8.七夕祭り

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花凛ちゃんに一緒に七夕に行けると話すと、「ホントに!?」と飛び上がるほど喜んでくれた。 「お祭りの日、お母さんお休みだったんだ。妹たちのことは大丈夫だって」 「やったね! 後は咲弥くんと慎太郎くんのスケジュールNGが出なければOKなんだけど」 「咲弥くんには私から話してみるよ」 咲弥くんから七夕の話は全然出てないけど、一緒に行ってくれるといいな。 「当日は浴衣着てこうと思うんだけど、結來ちゃんはどうする?」 「私は浴衣持ってないんだ」 お父さんがいた頃に買ってもらった浴衣は、今は柚のお下がりになってる。 着てみたいけど、買ってとは言えないもんな。 「じゃあ、私の着る?」 「でも、それじゃ花凛ちゃんが」 「私、浴衣いっぱい持ってるの。毎年夏のライブには浴衣で出る日があるから。それで良かったら貸せるよ」 さすがアイドルさん。浴衣を何着も持ってるなんて。 「貸してもらって、いいかな。お礼はできないけど」 「お礼なんていいのいいの。浴衣も着てもらった方が喜ぶよ。1回ライブで着ちゃったらもう次の年は着られないんだから」 うわあ、贅沢。 でも浴衣を着るなんて何年振りだろ。しかも咲弥くんの前でなんて、嬉しいけど恥ずかしい。 昼休み、咲弥くんを七夕に誘うと「もちろん!」と喜んでくれた。 「俺も誘いたかったんだけど、結來は家のことで忙しいかと思ったから」 「いつもは樹たちと一緒に行くんだけど、今年はお母さんが休みだったから私は友達と行っていいよって」 「友達かあ」 咲弥くんが私に顔を寄せる。 「彼氏とデートって言わなかったの?」 「い、言ってないよ。私なんかが彼氏って言ったら、お母さんビックリしちゃう」 「あ、『私なんか』って言ったな」 そういえば、『私なんて』禁止って言われてたっけ。『私なんか』でも、やっぱりダメか。 と、咲弥くんに手でほっぺをむにっとつままれた。 「約束破ったから、お仕置き」 「ひょ、ひょっとしゃくやくん、やめへよ~」 「あははっ、結來かわいー」 もー、咲弥くんってば。 「お取込み中、失礼しま~す」 驚いて咲弥くんから離れると、隅谷くんがいた。 「慎太郎かよ、脅かすな」 「教室だってのに人目もはばからずお熱いねえ。いくらみんな知ってるからってさ」 そ、そうだった。みんなにバレバレとはいえ、ここは教室。 学校ではあんまり咲弥くんと恋人っぽくしないようにしてたのに、油断しちゃった。 昼休みでそんなに人がいなくてよかった。 「花凛ちゃんから七夕のこと聞いたけど、咲弥その日行けんの?」 「夕方までだけどな」 「じゃあ花火は見られないな」 そういえば、七夕の夜は花火が上がるんだ。 柚と樹を連れて行くのはいつも昼間だから見たことなかったけど。 「ごめん、結來。花火は一緒に見られない」 「気にしないで。一緒に行けるだけで嬉しいから」 咲弥くんがちょっと寂しそうな顔をした。 七夕でもなんでも、咲弥くんはお仕事。喜んでくれる子供たちのためでも、やっぱり残念だよね。 「あ、あのね。七夕の日、私と花凛ちゃんは浴衣着るんだけど、咲弥くんと隅谷くんは……」 「浴衣? うわあ、結來の浴衣めちゃくちゃ楽しみ!」 「じゃあ俺らもそうしようぜ。当日は全員浴衣で集合な」 咲弥くんに笑顔が戻った。 隅谷くんと一緒に浴衣なんて、花凛ちゃん喜ぶぞ。 私も咲弥くんの浴衣、すっごく楽しみ。きっとかっこいいんだろうな。
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